福州からの通信(第3号)
2006年11月18日   宇野桂子

 朝晩だいぶ寒くなりました。南国に近い福州も人々の服装は長袖、ジャケット姿に変わりました。この頃、昼間はぽかぽかと気持ち良い天気なので、アパートのベランダでは布団や冬の衣服が干されています。

▼ 新校舎とスクールバス
さて、国慶節の休みが明けたら新入生が入学して来ました。入学式は新入生だけのようで在校生は授業です。いま、この学校は新しい校舎が馬尾地区の亭江という所に建てられています。まだ完成していなくて、新入生と二年生がその校舎で授業を受けていて、寮生活をしています。 来年の九月には、全部あたらしい校舎に移ります。教職員は亭江(チンジャン)の校舎といままでの校舎で授業をしています。もう事務職員のほとんどの人達は新校舎で執務しています。私も十月十八日から週に一回、新校舎で四時間授業をしています。 馬尾地区は福州の東端の港で、宿舎からスクールバスが出ていますが五十分かかります。学校がある亭江はそこから少し北にあり四方山にかこまれている何にもない所にぼつんと学校がたてられています。ま、これから発展して街ができるのでしょうが。今は路線バスも通っていません。朝はスクールバスがありますが授業が昼で終わっても、バスはありません。四時半まで待たねばならないとか、それとも路線バスのバス停まで二十分かかって歩いて行ってバスに乗って終点で宿舎までのバスに乗り換えて帰るか、という事でした。なんと行きは良い良い帰りは怖いです私には先生方がいろいろ心配して下さい別に乗用車を用意して下さいました。終わったらすぐその車に乗せてもらって宿舎へ帰ります。一時ごろ着きます。それから昼食、洗濯を済ませ一息つきます。先週から路線バスが昼、一車だけ学校の門ま第2校舎でくるようになり十二時五十分発だそうで、そのうちそのバスで帰ることになるでしょう。僻地に学校を建てるのに、その人員の搬送は初めから考えていなかったのでしょうか。教職員のなかにもずいぶん不自由を訴えている人もいらっしゃるそうです。

▼ 待ってくれた生徒たち
 私の授業は二年生の会話です。高校卒の生徒なので落ち着いていて私語、携帯電話のメールはあまりありません。彼等は授業開始が一か月半も遅れたので、それもあって意欲的なのかも知れません。新人生と一緒に授業が始まったのです。その間どうしていたのか尋ねたら、実家へ帰っていた、けれど故郷の友違は学校に行って留守なので寂しかった、早く授巣が始まるといいのになと思っていた。と言っていました。故郷は還い人は黒竜江省や海南省から来た人もいます。はるばる遠い所から日本語の勉強に来た彼等に、私は感動しました。亭江まで行くのは朝が早くてたいへんですが私の授業を待っていてくれる彼等のために、頑張ろうとあらためて思いました。

▼ 中国語の会話

 こちらへ来て日本語を教えることばかり考えていました。せっかく中国に来たのだから中国語を勉強しなければならない、と二年前に教えて貰っていた知り合いの中国人女性にまた教えてもらいたいとお願いしたら快く承諾してくれました。彼女は二年前は大学院の学生だったので時間もなんとかやりくりして来てくれましたが今は大学の先生なので忙しいだろうなと思っていたのに有り難い事です。これも頑張ろう。 さて、さっそく日笈酉話から、彼女が「今天几月几号」「明天几月几号」というような中国語の質問を普通の速さで言いました。私はそれを日本語に訳し答えを考え中国語で答える、こんな簡単な会話でもちょっと時間がかかります。これはいつも私が日本語の会話授業で生徒に質問している事です。さっと答える生徒もいますが時間のかかる生徒もいます。私と同じなのです。生徒の立場がよく分かりました。そして、基礎の会話をもっと勉強するよう授業していこうとおもいました。私の中国語もおなじです。基礎を十分に勉強します。初心にかえって。

▼ 野菜果物
 いま、野菜や果物が新鮮で豊富です。ホウレン草、白菜(まだ青い)チンゲンサイなど寵で売っていたり、リヤカーにいっぱい積んでいたり、果物も同じです。ざぼんのようなおおきい柚子、みかん、りんご、筍萄など、さとうキビもあります。竹みたいに店先に立ててあり売るときは切って皮を削っています。よく学生が買ってかじっています。私もこどもの頃はよくあれをかじっていたなと懐かしくなります。今は絶対にかじられません。なさけない。ほかにも梨やバナナは定番の果物で美味しいです。ミニトマト果物屋にあります。真っ赤でおいしそうですが食べたことはないです。スープに入れると美味しいそうです。こんどためしてみます。昼ごろ、よく道端でおでんを売っている屋台があります。たねは日本とおなじ大根、つくね、揚げ豆腐などどれもみな小さい一口大でジュースのコップの大きいカップに入れてくれます。ほかに干した茸やきゅうりなどもあります。学生たちはその場で食べていますが私は持って帰って昼のおかずにしてたべます。たいへん美味しいです。出汁はどうやっているのかわかりませんが、美味しいのです。柚子ザポンに似た大きい果物です。これが木になっているのをみたことがないし、葉っぱもみたことがないのでザポンと同じ種なのかわかりません。香りは日本でみる柚に似ています。味はやわらかい甘みと酸味があってのどの渇きがとまり空腹の足しにもなります。二年まえ夫とよくたべました。夫が腹具合が悪くなった時、柚子の食べ過ぎではないかと言われたこともありました。